「あー、こりゃ大変だよ」
「もー、どうしようもないよ」
師範方の打ち合わせの場に
そう言いながら入ってきた小林先生。
何がどうしようもないのかと言えば、
ここ最近の雑誌媒体の売行きだ。
どこもかしこも、朝日新聞か韓国を叩く
特集をしなければ売れないのだとか。
だけど、あちこちで特集していて、
タイトル見ても似たり寄ったり。
「またか」とうんざりする人だっているはず・・・。
と思っていたけど、そうでもないらしい。
「皆、違う意見なんか聞きたくないんだよ。
見たいものしか見なくなっているんだよ」
小林先生の嘆きを聞いて、なんとなく
背筋が寒くなった。
まったく脈絡はないけど、ぽっと台湾沖航空戦が
脳裏に浮かんだ。
台湾沖航空戦は、昭和19年10月に起きた戦いで、
大本営は日本軍の戦果を大々的に発表した。
本当は戦果誤認だったにもかかわらず、
サイパン陥落、絶対国防圏の崩壊・・・
良いニュースがない中で、皆がその大戦果に飛び付いた。
だけどレイテ沖海戦では、台湾沖航空戦で撃沈したはずの
空母が現れた。陸軍では、この機に米軍を叩きのめそうと、
ルソン島での決戦を急遽レイテ島に変更したものの、
輸送途中で多くの船舶と将兵を失う結果となった。
台湾沖航空戦の戦果に、疑問を抱いていた人もいた。
しかしその声はかき消された。
「大本営発表」は、今ではウソの代名詞のように
使われるけれど、何だか笑えなくなってしまった。
「見たいものしか見たくない」という人たちによって、
それは支えられていたのだから。
朝日新聞叩きが「大本営発表」だと言いたいのではない。
「見たいものしか見たくない」という感覚が怖いのだ。
それって、どこかがマヒしているんじゃないだろうか。
日本国民は、自ら言論統制の輪の中に入ろうとしているみたいだ。
それともこれって、単なるブームなの?
というようなことを、打ち合わせの場で、
師範方に聞いてみたかったのだけど。
何しろ声が出ません!
声帯を使っても音が出ない。
ハスキーボイスどころか、
ウィスパーボイスで
ヒーヒーフー。
小林先生が耳をそばだてて聞いてくださり、
なおかつ完璧な手話で通訳してくださったので、
爆笑してさらに声がかすれる。
ヒーヒーフー。
みなぼんにウィスパーボイスで話しかけたら、
みなぼんまでもが手話で・・・。
「道場当日、笹さんが喋れなかったら、
わし、手話で通訳するとよーーー」(小林先生)
「・・・・・・」(他の師範)
5秒後。
高森先生がおっしゃいました。
「・・・いや、普通に大声でしゃべって
いただければ結構ですから」
うう、ご迷惑をおかけしてます。。。。